ギフテッドか、発達障害か───2024年現在もこの問いを持ち続ける人をよく見かける。本当はギフテッドなのに、発達障害と診断されて素直にそれを信じ切って、傷付いて凹んで、自分で命を断つ人までいる。
本当にADHDなのは1~2%くらいだろう
アメリカ精神医学マニュアルDSMⅣ 編集委員長アレン・フランセス
かくいう自身も、ASDとADHDの診断はされ、フルIQは平均値を取るものの、ワーキングメモリの一部は平均の1.4倍ほどあり、ハーバード大に留学経験のある専門医から、
発達障害・・・じゃないかもしれない・・・
なんて首をかしげられ、調べれば調べるほど発達障害の特徴とは「真逆」だということがどんどん判明していった。
過去の経験なども含めてさまざまな定量的・定性的な分析をする中で、どうやら現代の日本では受け皿が発達障害しかないだけで、ある原因により能力に激しい凹凸が生じてるがゆえに、クライマックスの連続のトラブルライフになっていたギフテッドだということがわかった。
ギフテッドが発達障害と診断されやすいのはなぜなんですか?
ストレスを感じていると、検査をしても正確な結果が得られないからなんですよ
先生いわく、特にアレルギーなど慢性疾患を抱えてる場合は正しい検査ができないケースがあるとのこと。
その他、『ギフティッド~その誤診と重複診断』(通称:青本)や、たくさんの論文を読み漁った結果、ギフテッド特性の過度激動とそれによるストレスやスティグマで、発達障害を含むその他の心身の疾患と誤診される可能性も高いことがわかった。
- 慢性疾患
- 過度激動
- ストレス
- セルフスティグマ
ギフテッドが発達障害と間違われるこれらの原因について、自身の経験も交えながら書いていく。
原因1 慢性疾患
お医者さんいわく、慢性疾患や慢性炎症があるとWAISやWISCといった知能検査で正確な結果が出ないそう。
発達障害・ギフテッドのアレルギー疾患の有病率は、定型発達の2~4倍にもなる。詳しくは【2Eギフテッドチェック】という記事を参照のこと。
自身は生後半年からアトピーと喘息があり、大人になるにつれてアレルギーが重症化していき、慢性鼻炎や慢性耳炎も併発し、最終的に断薬+生活の見直しをすることで、大きなリバウンド症状を経て寛解に至った。
現在でも厳格な食事制限や行動制限をずっと継続してる障害者であり、日常のどこにアレルゲンが潜んでるかわからないから起きてる間は常に神経を集中して生きてる。ASDの臨床研究に参加した時の結果にはストレス反応値が平均の約4.5倍とあった。(自覚はない)
体の慢性的な病気のストレスがあると当然、集中ができなくてポテンシャルが発揮できません
慢性的な体の病気を抱えてる人は、あまりにもそれが日常的になりすぎていて、健康な人の何倍もストレスを抱えている状態なのに気づけず、一生懸命に頑張っていたり全力を出しているつもりでも、まったくポテンシャルを発揮できていないという、とても衝撃的な事実だった。
- 集中できない
- 継続できない
- 忘れっぽい
これら「THE 多動」な特徴と、慢性疾患によりポテンシャルが下がってる状態は、とても酷似してる。
特に炎症を伴う疾患であれば、TNF-αという炎症を起こす物質が知能指数にマイナスの影響を与えることもわかってる。知能指数が15~20ポイントほど低下するという説もある。
診断の指標になるIQ | 診断名 |
---|---|
IQ100±10 | 定型発達 |
IQ70未満 | 軽度知的障害 |
IQ35未満 | 重度知的障害 |
IQ70以上で凹凸差20以上 | 発達障害 |
たとえばIQ90のフツウの人でも、慢性的な炎症を伴う病気を持っているとストレスで、
- 軽度知的障害と同程度のIQ70未満まで下がり得る
- 認知機能が大幅に下がる
- 物忘れや動作の遅さ、癇癪などにつながる
※アルツハイマーと似た行動特性とも言える
IQには、大きく分けて4種類ある。
- 作動記憶
- 知覚推理
- 言語理解
- 処理速度
つまりこれらに凹凸があるギフテッドが慢性的な病気でストレスを感じていた場合、WAISやWISCの知能検査でポテンシャルを全然発揮できず、発達障害と診断されやすくなるそう。
ギフテッドは、あらゆる精神疾患の誤診率が全国平均比(アメリカ)で数倍~数十倍は高いから、お医者さんでも発達障害と区別がつかないのは仕方ないとも言える。特に次の「過度激動」による過集中や多動は、一見するとASDとADHDにしか見えない(が機序や動機が違う)。
原因2 過度激動
ギフテッド界隈の人にとっては聞き慣れた言葉かもしれないけど、Over-excitabilityという特性によって発達障害と間違われやすくなる。
Over-excitabilityとは、過度激動、過興奮性、情動過剰などと訳される、ギフテッド特有の「激しさ」のこと。すべての物事や出来事に関して、普通よりも異様なまでに強く感じ、激しく動き、広く考え、深く考える。この激しさは、5つに分類される。
これら特性によって、
- 集中できない
- 集中しすぎる
- 継続できない
- 継続しすぎる
- すぐ忘れる
- なかなか忘れられない
- めちゃめちゃ活発
- めちゃめちゃスロー
- 外向的
- 内向的
こういった両極の行動特性として表れてしまい、その瞬間だけを切り取った時に「どう見ても発達障害にしか見えない行動」を取ったりする。(生理学的には違う現象が起きてるにも関わらず)
ポピュラーなところではHSP(Highly Sensitive Person=非常に感受性が強く敏感な気質を持った人)に近い。近いというより、学問分野によって解釈や呼称が違うだけで、重なる部分があって自然だと個人的には考えてる。
HSPの人が仮にWAISなど正式な知能検査をポテンシャルが発揮できる状態で受ければ、そうでない人に比べて、
- 作動記憶
- 知覚推理
- 言語理解
- 処理速度
これらいずれかのIQが高い傾向にあるんじゃないかな。
Over-excitability(OE)、情動過剰・過度激動・過興奮性が、発達障害の誤診を増やす一因となってる。
原因3 慢性ストレス
アレルギーなどの慢性炎症以外での慢性ストレスも、認知機能の低下を招いて、WAISやWISCの知能検査で正確な測定ができない。たとえば、
これらは如実にIQの低下を招いて認知機能が大幅に下がる。たとえるなら酩酊状態(へべれけ泥酔)と同等まで認知機能が下がる。(ポテンシャルが半分未満しか出せなくなるという研究もある)
そもそもストレスとはステロイドホルモンの「コルチゾール」のことで、イヤな気持ちになったりしんどいと、このコルチゾールが出る。
コルチゾールが増えるほど認知機能は低下して、心身の疾患への罹患率も上がる。
- ぼーっとする
- ミスが増える
- すぐ忘れる
- 集中できない
- だるい
一見するとADHDと違いがないような症状も、極度のストレス状態だと誰にでも起こる。この状態の時に知能検査を受けた場合、定型の人もギフテッドの人も発達障害かのような結果が出るのは明白。
原因4 セルフスティグマ
ギフテッドが発達障害と間違われる原因の4つ目は、セルフスティグマ。
セルフスティグマ:自分への差別・偏見
過去に「のびのびと自分らしくなんらかの成果を出した時にトラブルになった経験」があった場合、それがストッパーになって、どんな時も平均の結果だけを出すように無意識に調整してしまう=手加減グセがついてしまっていたりする。
多くのギフテッドは、全体が楽しく和やかな雰囲気がとても好きで、競争や比較をあまり好まない傾向がある。それなのに、自分らしく生きているだけでなんらかの成果を出してしまった時に、人間関係のバランスが崩れてしまうケースがある。
調子に乗るなよ
なんでもできてすごいね
あなたには勝てない
ずるい、うらやましい
あなたは天才だからね~
なんでも簡単にこなして人を見下してる
こうやって言われたり、噂を吹聴されたりして、人間関係のバランスが崩れてしまい、それまで仲良くしていた人に嫌われたり、いじめられたり、陥れられたりしがち。さらには、
- めんどうを押し付けられる
- 難しい相談をされる
- たくさん頼りにされる
こうしたことが人生で度々重なると、その負担から、無意識に自分の能力をあるがまま発揮しようとしなくなり、その結果、いざWAISやWISCなどの知能検査を受けた時にも平均的な数値しかでなくなる現象が起こり、バラつきがあった場合には発達障害と診断されやすくなる。
まとめ
ギフテッドが発達障害に間違われる原因4つを、専門医の意見をもとに解説した。
- 慢性疾患
- 過度激動
- ストレス
- セルフスティグマ
これらが激しい人が、WAISやWISCなど知能検査を受けた場合は大幅に結果が悪くなり得る。『ギフティッド その誤診と重複診断』では、知能が高い人はあらゆる心身の疾患や障害と誤診されやすく、重複もしやすいと書かれてる。
自己理解を誤ると、自尊心を失ったり自己肯定感が下がったりする。矛盾はそのままQOLの低下を意味する。たとえかかりつけの病院のお医者さんにどういう精神疾患や発達障害だと診断されたとしても、診断名はあくまで受け皿やツールであり、必ずしも生理学的に100%正しいわけではないということを知っておくと、過度に傷付いたり気にすることは少なくなる。
レッテルなど気にせず、ただひたすらに個々のハッピーを追求しよう。
関連資料
Relationships among stress, emotional intelligence, cognitive intelligence, and cytokines National Library of Medicine
各種資料(神経疾患) 日本禁煙推進医師歯科医師学会
時間的制約が作業効率と精神状態に及ぼす影響 金沢工業大学
ストレス度に着目した作業環境評価 ライフサポート学会